出品作品 No.55~81
記憶が正しければポール・ニザンは35歳で亡くなった。 そのポール・ニザンを意識して作った年老いた男。これは私の25年前の作品です。 ポールが作家であった事を考え手に主張を持たせて作り上げていました。 35歳以降、むしろ老人と化した男で甦らすことを考えてみました。 簡単に言えば「リニューアル」。 自分が作ったものを再構築すること。 まず主張していた両手首をノコギリで切り落としました。 そこで男の存在が、あらたに甦りました。以前の 手は主張が強すぎたからです。穏やかな目線。 ファッショナブルな衣装。 あくまでも老人であり続ける事。 切り落とした手を主張しない事で観る側にとって何気ないインパクトと存在感が生まれる事を考えました。 もう、ゆっくりしてもいいのではないですかポール。 「止まる男」はそうして生まれました。
高さ120cm・横幅、奥行き共に50cm
木心、石塑粘土、色和紙貼り
No.55 長岡哲生 ながおかてつお
『止まる男』

この作品は、旧約聖書・創世記のエピソード「Paradise Lost(失楽園)」から構想を得て、制作しました。 【蛇の誘惑により神の禁を破り、禁断の果実である「知恵の実・林檎」を手に取ったイヴ】を表現しています。 この作品は、イヴが禁断の果実・林檎を手に取った瞬間の、不安や迷いといった心の揺らぎを表現しています。 未知の果実への好奇心や誘惑と、神の禁忌を犯す不安や迷いに揺れる心を、アンニュイな目や顔の表情で表現しました。 彼女が全裸なのは、迷いの渦中で未だ知恵の実を口にしておらず、まだ自意識や羞恥心という概念を獲得していない為です。 創世記のアダムとイヴは、真実を知る知性を獲得する代償として、安全と幸せが保証された神の楽園「エデン」を追放され、苦しみや痛みとともに生きていく事となります。 蛇に誘惑され、最初に禁断の果実を手に取ったのは、イヴです。 知性を得て楽園を追放されてから、彼女の本当の人生・人間としての人生が始まったのではないかと、私は考えています。 箱庭である楽園で飼われる神の人形ではなく、荒野で苦しみや痛みとともに、知性を得た人間として、強かに生きて子孫を残したのです。 ※技法は球体関節人形、素材は石塑粘土・グラスアイ・人毛を使用しています。
30 × 30 × 36 cm
石塑粘土・グラスアイ・人毛
No.56 天音心音 あまねここね
『Paradise Lost(パラダイス・ロスト)』

もう、何十年も前のことです 保育所のお迎えは4時ですが その日は急な用事で遅れてしまい いつもなら賑やかなホールに3歳の息子が手にキャラメルを持って一人ぽつんと正座をしていました 申し訳なくて 無償にいじらしく思ったことが今 も時々おもいだします
幅 17cm 奥行き 17cm 高さ 28cm
軽量石塑粘土 布 糸
No.57 成瀬麻里子 なるせまりこ
『キャラメル』

「記念写真」
日頃、ふと、知らずもがなに口ずさむ曲がある。それは軍歌です。
海軍兵であった父が晩酌時によく歌っていた歌である。
幼少時、聞くともなく聞いて、我が耳底に残り、80代になった今、ふと口ずさむ自分に驚いている。
若き父母の写真が我が家にある。
戦時下にあった横須賀に入港した船に乗る父に会うため、赤子連れで、青森から上京した母である。その折りに、写真館でとった、緊張顔の一枚である。
今年、日本は戦後80年。されど、世界では戦争止まずである。
一枚の写真から、戦禍にあえぐ人々に思いをはせ、父母を偲び創作した人形。
いつも暴力的で厳格で嫌いだった父の顔、つたないながら、少し優しく作れたかもと思い出品しました。
w25cm d15cm h36cm
石塑粘土 縮緬張り
No.58 松村良江 まつむらよしえ
『記念写真』

インドの破壊神とされるカーリー神に着想を得て、自分なりに解釈しました。内なる怒りや快とは何かを表現しようと試みました。 名前は、元素記号のリンを意味する燐とつけました。 クロスボディのような作り方で、ワイヤーが入っている部分は関節が曲がります。粘土のパーツは、何度も塗料を塗り重ね、陶器のような質感を目指しました。目は描いていて、まつ毛を貼り付けています。ボディの布は、染料で染めてから塩素系漂白剤で脱色して模様をつけました。 先日個展にて発表しました。その時は市販のビーズクッションに布をかけたものの上に、腰掛けさせて展示しました。 腰に動物の革を巻いています。専門店で購入したものですが、自分で殺菌処理などはまだしていません。殺菌処理は必要でしょうか。
20・12・64cm
石粉粘土、布、羊毛フェルト、ワイヤー、毛糸、たこ糸、滑り止め剤、
ドールヘアー(サラン)、つけまつげ 、人工石、UVレジン、革 、麻紐、
アクリル絵具、アクリルガッシュ、ラメ塗料、水性保護剤、染料、塩素系漂白剤
No.59 三輪七海 みわななみ
『燐(りん)』

冬はやがて春を迎えます。 厳しい寒さに耐えた草木が 暖かな日差しの中で 一斉に芽吹き、花開くように 私たち1人ひとりにも 希望の春が訪れますように。 凛とたたずむ人形に ほのかなピンク色を添えて つくりました。
幅40.奥行き30.高さ57
石塑粘土 油彩
No.60 マーメリーココ
『春を待ちわびて』

「悲嘆の獣」は、私の内に巣食う負の感情の断片です。 指のように歪んだ角には髪が絡みつき、拭い難い悲しみの具現として、私たちの前に姿を現します。 真紅の瞳と人ならぬ脚、血の気を感じさせない肌は、見る者の内に不安を呼び起こしますが、この獣は人の悲しみに寄り添い、否定せず、共に涙を流す存在です。 私は、実在しない生物を創造することを通して、現実と空想の境界を探り続けています。 「見てはいけないものを見てしまった」という未知への畏怖を感じさせながらも、生物がもつ機能美や、ヒトガタであることの愛らしさ・生々しさゆえに「見ずにはいられない」という感覚を両立させたいと考えています。 本作では、偶蹄類の後肢の骨格を人間の身体構造に落とし込み、長い脚を形成しました。 さらに、肘と膝を二重関節とし、脚の付け根の関節を前付きに設計することで、可動域を拡張しています。 それにより、悲しみに身をよじるような、感情の軋みを伴う姿勢の表現が可能となりました。 実際の動物の骨格や構造を観察し、「もし本当に存在するならば、このような形をしているだろう」と想像を重ねながら制作しています。
10×5×47
石塑粘土、エポキシパテ、アクリル
No.61 鹿之川彩 かのがわあや
『悲嘆の獣』

タイトル『橋の上の子供』 10歳の私は毎日家の近くを流れる川を渡って小学校へ通っていました。ある日 橋の途中で生まれて初めての絶望に立ち尽くしていました。下を見ると黒く渦巻く波が次々と白く砕け散っていくのが見えました。吹き上げてくる風は頬に冷たく当たり山が影絵のように見えました。それはいつも母と並んで見ていた風景とは違っていました。どうにもならない現実とすべてを押し流していく時間がある事を体全体で感じました。 言葉にできない思いを胸の奥に秘め、私はいつしか美術に興味を持つようになりました。大学受験では美大の油絵科を目指しましたが、なかなか夢はかなわず、3浪めの時に四谷シモンの人形に出会いました。震えるほどの感動を覚え「人形」という表現方法があるのを知りました。自分も人形を作りたいという強い思いが湧いてきました。22歳の時 創形美術学校で絵画を学びながら四谷シモン人形学校に通い始めました。 教材で球体関節人形の作り方を教わり、自宅では並行して自分自身や両親などをモチーフにした肖像人形を作りました。人形を作り始めて2年目で、神田の画廊(スタジオ4F)で個展をしました。「愛おしい過去の時間」を作品にしたいという思いに突き動かされるように作っていました。発表した事で作品で思いを語るには技術力が足りないと実感し あらためて桐塑や胡粉の技術を身につけようと四谷シモン人形学校での制作に励みました。 そして「特定の誰かではなく どこかにいるような子供の人形が作りたい」と、自分の求める人形の土台となるイメージが出来てきました。人形制作の為に 洋裁や編み物も習い、自分が子供の頃に着ていたような懐かしい雰囲気の服を着せるようになりました。画廊やデパートで個展やグループ展を続けていくうちに、飾るための人形というよりも 見る側ともっと距離が近い 親近感のある人形が作りたいと思えてきました。 40歳の時に桂の木を彫ってみました。手の中に探していた手触りと温もりがありました。独学で木彫りの球体関節人形を作り始めました。後戻りできない緊張感とその時々の気持ちを直接残せる面白さがありました。今までの工程とはまた違う新しい試行錯誤の日々が始まりました。五感が刺激され時間とともに移ろっていく木に無常感を感じ、遠い日の記憶が蘇ってきます。人形を作り始めて43年、個人的な郷愁を越えて「誰の心の奥にもあるような幼い日のせつなさやもどかしさ」をテーマに人形を作り続けていきたいと思っています。
幅28cm・奥行22cm・高さ57cm
桂の木
No.62 長谷川裕子 はせがわひろこ
『楓(かえで)』

作品名[THEO]テオ 〜神さまからの贈り物〜 今年の春に、浅草の小さなギャラリーで学生時代からの友人である櫻井真紀子さんと、創作人形展(2人展)を開催しました。 テーマは「四月の風は人形たちのささやき」。 初夏の爽やかな風や光と、人形たちの小さな会話やクスクス笑い声が聞こえるような空間が作れたらいいね、と 毎日時間を作って準備をして。課題に追われる学生時代に戻ったような展示会になりました。 [THEO]テオは、その時に展示した中のひとつで、1番思い入れがあるものの、これで完成!という気持ちになれず心残りのある作品でしたが、 今回の応募を目標に、修正加筆して完成としました。 球体関節人形のボディにペイントや、別の鉱物などをまとわせる表現は以前からやってみたい事のひとつで、この人形には植物や生き物を描くのがいいかな?と最初は日本画のような牡丹の花を描き始めたのですがなんだか違う気がして消してしまいました。 テオは自宅で飼っている猫の名前でもあります。 ちょうど絵付けの仕上げ段階の頃にテオが体調を崩し、余命宣告を受けてしまい、制作中も出来るだけそばに置いて、祈る気持ちで小さな花や蝶を描きました。 生も死もいつも同じ場所に有る。というイメージを、ボディには生き生きとした植物や蝶や鳥。白いレースの花は、死んではまた生まれ変わる花々に見立てて描いています。 蝶が羽を休めるように佇む少年と小さな草花たちの、尊くて、かわいい命のささやきが表現出来ていたら‥と思います。
素材 *球体関節人形 / 石粉粘土・胡粉・水可溶性油絵の具 *手元のドライフラワー/紙粘土・リキテックス *椅子/既成の木箱をリメイク
12×15×55cm
石粉粘土 木の椅子
No.63 成沢しのぶ なるさわしのぶ
『THEO ~神さまからの贈り物~』

No.64 doll-modeler3 どーるもでらーさんごう
『Tactics!~駆け引き~』
<作品のテーマについて> 人間社会は他人との関わり合いで成り立っています。助け合う場面は美しいのですが、時には利害が相反し、巧妙な「騙し合い」や「駆け引き」によって優劣が決まる事もあります。 この作品は「駆け引き」をテーマとし、視覚的に最もイメージし易い「カジノ」や「ゲーム」をモチーフにした土台一式のビネット作品にしました。 <人形と衣装> 人形を飾際、折角作った人形の造形は衣装で殆どが隠れてしまいます。 そこで、人形のボディーを隠さない衣装を素人なりに考え、このデザインに辿りつきました。日常生活のシーンで着用する物では無いので、展示にあたり「カジノ」風の舞台を用意しました。 ただし、私は裁縫の経験が乏しく、取れたボタンを付ける程度しか出来ません。もちろん、ミシンもありません。 悪戦苦闘の末、縫い上げましたが・・・残念な衣装を着ているのはそのような事情があります。 <人形製作のキッカケ> 私は自動車や戦車などのプラモデルが好きです。地面を模した飾り台を作り、フィギュアなどを添えて簡単なジオラマ風の作品に仕立て楽しんでいます。 ジオラマに用いる小さなフィギュアの塗装から、人形の顔を描く事に興味を持ち、既製品の1/6サイズの無メイクヘッドに顔を描いたり、レジンアイを作るなどして遊ぶようになりました。 ですが昨今は既製品のヘッドパーツがアニメ顔ばかりになってしまい、私好みのパーツは次々に廃版になりました。 仕方なく粘土を使い自身で造形を試みた事がキッカケです。私の作品は、他人様にお見せ出来るレベルに無いのではと何度も迷いましたが、素人の創作人形を展示できる機会は少ないので応募させていただきました。よろしくお願いします。 <既製品素材の利用について> 土台:市販品の小物入れ木箱を逆さにして加工し、土台として利用。 サイドテーブル:市販品の蝋燭立てを着色・加工してテーブルの基部に利用。 人形台座:基部の円形部分は市販品の木製茶托を逆さにして着色して利用。 小物:サイコロ、トランプ、金貨(おもちゃ)は市販品をそのまま利用。 壁面デザイン:版権フリー画像を使用。個人利用及び商業利用可、加工利用可、クレジット表記不要。ダウンロードサイトhttps://aipict.com/utility_graphics/brown_background/
幅42cm 奥行24cm 高さ35cm
石粉粘土

No.65 shiro しろ
『トラムシ』
サーニットという焼いて固める樹脂粘土やモヘアを使ってトラの関節人形を製作しました。 普段、園芸作業で害虫として処分しているイモムシたち。 人間の勝手な都合で害虫とみなして駆除されてしまうムシたちへ、次は強い存在になって帰っておいでと思いを込めて、強くて美しい生き物であるトラの前脚、後ろ足の間に中脚を作って、イモムシのようにしました。 耳・首・胴・前脚・中脚共に肩と肘、脚首が球体関節で、後ろ脚は糸ジョイント、しっぽにはワイヤーが入っているのでそれぞれ動かせます。 耳を動かす事で表情が変化して見え、胴体にも関節が入っている事で四つ足や二足のさまざまなポーズを 自然にとることが可能です。 後ろ足には関節を入れず、二足で立てる事でより"不思議な生き物"感が出ると思っています。
立って30cm座って23cm幅15cm
サーニット・モヘア・ガラス・ワイヤー

No.66 柴田尚美 しばた なおみ
『レースドール~レディ・ダイアナ~』
コンセプト
レースドールとは、18世紀にヨーロッパのマイセンやドレスデンで作られた陶磁器人形が発祥です。 19世紀にはレース飾りがつき、陶磁器のレースドールとなりました。 日本には1978年にLA在住のエレン=グローム氏が広めました。 日本人の繊細さを器用さで よりエレガントな世界が誕生し、日々高度な作品へと変化しています。
技法
①石膏型(モールド)に陶磁器の土を流し入れ、 型抜きしたボディー(グリーンウェアー)に 陶磁器の土を染み込ませたレースを着せて1200℃で24時間焼成。②釉薬(グレーズ)を塗り、1013℃で20時間焼成。③顔描き、金や銀、パール液(パールのような輝きを出す液)などを塗り、830℃で12時間焼成。最初の焼成時に、生地のレースはすべて燃えてなくなりレースに染み込んでいた陶磁器の土だけが、レースの姿のまま陶磁器になり、陶磁器人形の完成です。
素材
お人形、ドレス すべてが陶磁器です。本物の生地のレースに、陶磁器の土を染み込ませ、窯焼きすると生地のレースがすべて焼け、陶磁器人形に生まれ変わります。
影響を受けたもの
レースドール作家であった母(柴田恭子)の残した宝物をより輝かせて素敵な作品として発表したいと思っています。
工夫箇所
人物の顔立ちや髪型を参考に、オリジナルの石膏型(モールド)を作成し、いろいろな種類のレース模様を活かして個性的なポーズやドレスを生み出しています。陶磁器なのに陶磁器に見えないような柔らかい雰囲気を目指しています。
メッセージ
オリジナルの石膏型(モールド)に 固い陶磁器とは思えないよう布のレースの風合いを活かした 動きのある作品を制作しています。ぜひ、多くの皆様にレースドールの世界をのぞいていただけたら幸いです。
40・40・30
陶磁器

No.67 Tagui studio たぐいすたじお
『Tagui〜Findme〜』
起きているかい 黒兎がたずねると うん、大丈夫起きているよ と、かすれたこえでファインドミーは答えた まったく、妖精という生き物は、隙を見つけては眠っている。行き先をしっているのは彼らだけだというのにだ。 もしも妖精達がもっとちゃんと目を覚ましていてくれれば、道に迷う者はいなくなって困る者が少なくなるのに、、、そう考えた所で黒兎はこれ以上考える事をやめた。 迷うこともまた、大切な事だと気づいたからだ。 私の全ての作品の総称をTagui と名前付けています。これは、類という漢字に由来しています。 この「類:たぐい」という字によって似たもの達が仲間として一つに括られます。 誰かと誰か、何かと何かを仲間として結びつけるかの様にTagui達もそこに存在しているのかもしれません。 生地に綿を詰めて作るシンプルなぬいぐるみの制作方法と様々な技術を組み合わせ、どこまで表現する事が出来るのだろうかと夢中になり制作しています。例えば、うさぎの顔や胴体のツイードは機織り機を使ってパタパタと織って作ります。この時糸と糸の組み合わせから生き物の表面を想像しながら制作します。他には、過去に私達が存在していた事を示すカレンダーの生地を使用し時間の存在を作品の中に含ませています。 この様に、素材にも多くの表現の可能性を感じて制作しています。 日頃はおもちゃである事を前提とし、触ったり抱きしめる事の出来るぬいぐるみ作品を制作していますが、今回はいつもより繊細な作りになっています。自由に持ったり動かしたりは出来ませんが、その分想像の世界で楽しめる様物語をつけました。
35・26・47
羊毛、糸、ビンテージファブリック、ウッドビー、
フェルト、ボタン、針金、布地

No.68 七衣紋 ななえもん
『青い月』
ある日の夜、広場へと降りていく階段の途中でふと空を見上げるとまあるく静かに輝く月。それを見て「ああ、かぐや姫をつくりたいなぁ」と思った。それがこの作品である。 かぐや姫とはなんとなくのイメージで、良く知られた竹取物語ではなく、月に住まうお姫様と言った感じ。 月のあかりと夜空の色を衣装で表現した。 素材は石粉粘土。球体関節人形で、この作品は正座が出来るように太ももの裏を通常より大きくカットしてある。 私が球体関節人形を作る理由は「動く人形が好きだから」。そこにあるだけで美しく愛らしい人形が、少し首をかしげただけで命が吹き込まれたように表情が変わる瞬間を何度か見たことがある。その瞬間を目指しているのかもしれない。 私にとって、人形は愛玩物だ。痛い思いや悲しい思いはあまりさせたくない。そばに置いて愛でるもの、ホッとするものでありたい。 作るにあたって、自分の思いを人形に乗せることはあるけれど、殊更にそれを前面に押し出すつもりはなくて、所有者が思うままに可愛がってくれればそれでいい。 元々着物が好きなので、衣装はとても大事な表現の一部だ。実際思うような布が見つからず焦ったり、逆に手にした布からイメージして人形を作り始めることも良くある。自分の作品として、衣装のない人形は考えられない。「これが一番似合う」衣装を目指している。 けれど、夏、暑くなれば涼しい格好に、寒い季節には温かい上着を着せてあげたくもなる。時には思い切ってドレスも着せてみたい。 むしろそんな風に可愛がってもらえれば作者冥利に尽きるというものだ。そんな訳で、着せ替えを前提とした人形作りも心掛けている。 衣装はあまり複雑な着付けにならないように、ボディはノースリーブを着せても違和感ないように。 着物だと寸胴、洋服だとくびれのあるボディの方が映えるので、両立するシルエットを常に模索している。欲張りかもしれないが小さなこだわりなのである。
62×62×43
石粉粘土(プレミックス)、化繊毛、アクリル塗装

No.69 草珠 そうじゅ
『エルフィン』
ビスクの美しい肌合いを楽しみつつ手に取りやすい人形を作りたいと思いこの形にしました。 頭と肩・手の先をビスクに、ほかの部分(体・腕・足)はぬいぐるみになっています。 首の部分は関節があるので稼働するビスクを楽しめます。小さな手はビスクの繊細さを楽しめます。 デザインはおもちゃのお人形さんをイメージしたシンプルでかわいらしい感じにしました。
スカート・ジャボ・髪飾りは着脱できます。素体はアンバランス・未完成・異素材の融合がテーマです。本来ならば整えるべきところが不ぞろいで、隠すべき場所があらわになって いる愛らしい継ぎ接ぎの子。私はこの子の不ぞろいもアンバランスも愛おしいと感じています。この人形を手にした方に、ふわふわなかわいらしさと、その中のアンバランスな愛らしさ・・・この微妙なズレ感を楽しんでいただければと思います。
幅15㎝ 奥行15㎝ 身長20㎝
ビスク・布

No.70 SUZUKI MAIKO すずきまいこ
『月を見下ろす』
この人形は、アメリカ合衆国ミズーリ州のネルソン・アトキンズ美術館に収蔵されている水月観音菩薩をもとに自分なりにイメージして制作してみました。 岩に座して水面に映る月影を見つめる菩薩を表現するため、股関節と膝の関節の可動域を広げる工夫をしてみました。 この人形の制作を通して人体構造や筋肉の付き方など改めて勉強になりま した。 一番難しいと感じた所は“菩薩の様な微笑み”です。見てくださる方々にそう見えたなら嬉しいです。
人形22・15・83 什器35・35・20
石塑粘土 人毛 グラスアイ

U22 No.71 有松颯真 ありまつそうま
『これ、どうぞ』
この作品は、小さなすずめが森で拾った葉っぱを大切に届けてくれる──そんな心温まる物語をモチーフにした、木目込み人形の一輪挿しです。 技法・素材: 素材には桐塑を使用し、伝統的な木目込み技法で布を丁寧に木目込みました。 制作のきっかけ・背景: 私の祖父が木目込み人形の職人であることが、制作の原点です。長年培われてきた技術と文化を受け継ぎながらも、現代の暮らしに自然と溶 け込む木目込み人形の新たな形を模索しました。 工夫した点・表現へのこだわり: すずめの丸みやふっくらとした柔らかさを表現するため、造形に繊細な丸みを持たせ、布の質感と色合いで温もりを演出しました。また、一輪挿しとしての実用性を持たせることで、鑑賞だけでなく生活の中で楽しめる要素を加えました。 伝えたいこと: 木目込み人形は、従来の雛人形のような形式美にとどまらず、もっと自由で親しみやすい表現ができる技法です。この作品を通じて、木目込み人形の魅力と可能性を、より多くの人に感じていただけたら嬉しく思います。
(4・5・6)cm
桐塑

No.72 鳥羽 かずこ とば かずこ
『ボク ト ハナシテ』
わたしの相棒の猫のボクがいなくなり、 もっと誰かとお話ししたり、トモダチになれるよう また、き てもらいました。
幅37㌢奥行き16㌢高さ77㌢
布、厚紙、フェルト

No.73 松本潤一 まつもとじゅんいち
『卵の殻を破らねば雛鳥は生まれずに死んでいく』
アニメ『少女革命ウテナ』で論じられるテーマの一つと目される“表現者と世間との葛藤や軋轢”を自分なりに解釈し、自前のキャラクターで表現してみました。作家(表現者)は文字通り剣を絵筆に持ち替えて、そこから花鳥風月等の美を生み出し闘うのです。
25.40.30
木粉粘土

No.74 Sumire✯Guignol スミレ ギニョル
『贖羽』
贖羽(しょくう) 美しい羽を持つ天使がいました。 ある日、天使はひとりの少年と出会います。少年は彼を見上げ、憧れと劣等の入り混じった瞳で呟きました。 「……素敵だね。」 その言葉に、天使は魅入られたように静かに微笑み、自らの片翼を差し出します。 少年の手が震え、銀の刃が月光を返しました。 切り離された白い羽が宙を舞い、光とも血とも知れぬものが夜に滲んでいきます。 天使は痛みに瞼を伏せながらも、微笑みを失いませんでした。 やがて、天使はその翼を少年の背へと縫い付けます。 針が肌を貫くたび、涙と祈りが静かに落ち、糸が結ばれていく。 少年の背に宿った純白は、呪いのように――痛みの中でしか輝けない光でした。 それは、彼らなりのしあわせでした。 *** 天使が自らの片翼を分け与えた、ひとつの儀式。 縫合と涙、痛みが交差するその行為の果てに生まれた白は、贖いの証である。 「贖羽(しょくう)」 は、救済と代償が同時に宿る瞬間を、 球体関節人形というかたちに託して生まれた作品です。
素材:石粉粘土、アクリル絵の具
(10・15・66)cm(9・15・64)cm
石粉粘土

No.75 中庭 なかにわ
『静かな家での同居人』
今までは、ただただ作る事が楽しくて人形を作り続けていました。今回は、もし自分が人形をもつとしたら。静かな家で、ずっと2人だけで過ごすとしたら⋯の同居人として作ってみました。

