出品作品 No.1~27
海を漂うビニールは海藻やクラゲと間違えて亀や魚が食してしまうそうだ。やがて排出されずに体内に溜まり餓死してしまう。食べているのに餓死という悲しみを人形へ落とし込みました。私の中では挑戦した作品で、顔を作り込まずに「悲しみ」「怒り」「哀れみ」を表現し創作しました。
幅16奥行き16高さ59
羊毛
No.1 土方智香子 ひじかた ちかこ
『海の亡霊』
2021年に12星座のおにんぎょうを製作し、自身の星座でありました牡羊座を手元に残した作品です。守護性の火星、カラーの赤、守護石のルビー、ダイヤモンドをイメージし形にしました。神話や星占いによる"まっすぐなものの見方”という性質も参考にお顔、表情をつくりました。羊のもこもこやくるくるの角をヘアスタイルにしてみました。光の加減や角度で変わるスパンコ ールのキラキラが、夜空に光る星のように思っています。
26x20x20
ベルベット、コットン
レース生地等の布(首の芯にガラス瓶が入っています)
No.2 かとうゆりあ
『牡羊座』

人形の本体:桐塑と粘土を混ぜて使っています。 塗装:胡粉。 手、足は動くようにゴムで接続。
衣裳:綿ローン(着せ替えを楽しむことができる) コンセプト:白い帽子の想いから生まれてくる作品を愛しんで制作しています。
30cm(h)ホルダー込 円台35cm
桐塑、粘土
No.3 高村とき枝 たかむらときえ
『白い帽子』

この作品は、まわりから見る角度によっていろいろな顔が出てくるように作りました。見る人によって感じ方がちがうのでぐるりとまわって見てほしいと思います。 作ったきっかけは、「人はひとつの顔だけじゃない」と思ったからです。みんなどれも自分なのに、ちがって見えます。 そのことを作品にしたいと思いました。 材料はねん土で、色はアクリル絵の具を使っています。 赤や青や黄色など、はっきりした色をえらんで、 体の部分にはもようをたくさん描いて、にぎやかさや元気な感じを出ています。下の面にも小さな顔をほって、「どこを見ても顔がある」ように工夫してみました。 民藝などが好きで、夏休みに民族博物館に行って外国の民族の仮面やおまつりの人形をみて、そこからアイデアをもらったりもして作ったものです。
7 .7.22
粘土
U22 No.4 SANKICHI さんきち
『ぐるり百面相』

副題「朝露に輝く君の宝石、月夜に光る君の宝石」として、人形2体の置く位置により、ねこが知っている鹿の朝露に輝く角の美しさ、鹿が知っている月夜に光る猫の瞳の美しさを2つの視点から表現しています。
40×30×45 13×15×30(1対)
石粉粘土と木粉粘土を混ぜた造形に革を貼っている。
No.5 西島礼子 にしじまれいこ
『君の宝石』

運動会シーズンのある日。 転んで怪我をしたユミちゃんの前にどこからともなく天使が現れます。 ユミちゃんは田舎の中学生。受け口でしっかりした顎の大人びた少女です。内気な性格ですが、情熱的な魔性の女に憧れています。「あの~、羽根と輪っかを見てもらえればわかると思いますが、実は私天使です。決して怪しい者ではございません。あなたをお助けに参りました。えっ…天使はもっと可愛い子供のはず…いえいえ、時間は万物に平等に流れるんですよ。当然天使も経年劣化いたします。」と言って、嬉々として少女の足に包帯を巻き始めました。天使は思います。まだ未完成な彼女の美の前に跪いて包帯を巻く楽しみを味わえるのも私が天使だから。だから天使はやめられない♥ 一方ユミちゃんは思います。私の美の前に跪いた記念すべき第一号が、よりによってコイツか!…と、このようなイメージでこの作品を作りました。 残念ながら私は天使に会ったことはありませんが、時間の流れで容貌が変化する天使のほうが好みです。 次に経年劣化について説明します。天使の全身像は、筋肉の落ちた貧相な体を目指しました。張りが無くなり、皮下の骨格がうっすら分かる様にしたつもりですが、うまくいったかどうか。お腹の緩みとお尻の緩んだ肉と皮が太ももの裏に垂れる感じを出すのに苦労しました。シミは主に背中に付けました。前歯の黄ばみと体にはTシャツ短パン跡(日焼け)を付ける事で生活感を出しました。頭は前方から後退していった禿げ頭で、残る毛はくせ毛の付け髭を付けました。 最後に、天使の羽根と輪っかについて。輪っかはあえて小学生が工作で使用するようなモールを巻き、羽根はランドセル風に背負わせ、手作り感のあるものにしました。 というのも、この作品そもそもが、"少女と経年劣化天使” と捉えても良し。 "天使に化けた人間と巨人の少女” と捉えても良し。どちらでも自由だからです。その為、ヤバいおじさんだった場合も考慮して、そんなおじさんでも作れるような輪っかと羽根にする必要がありました。 備考 両腕取り外し可能(マグネット使用)頭部可動(ゴム使用)なポーズ人形です。
幅:12㎝ 奥行:13㎝ 高さ:25㎝
石塑粘土、胡粉、油彩、付け髭
No.6 おばち
『巻く男』

満天の星空、無数の光が少年の頭上に降り注ぎ、それが、宿命に抗う彼への、希望に満ちたメッセージのようだと思いたい。抗えない運命に翻弄されながらも、切なくも強く生きていく少年の姿を表現してみたかったです。 少年の表情から決意やひたむきさが伝わったら嬉しいです。
30×30×50
石塑粘土
No.7 MinagawaDolls みながわどーるず
『言葉の降る夜』

(作品タイトル) 心のきらきら (作品のテーマと背景) 迷いや弱さで立ち止まってしまったとき、かけてもらった言葉や、出会った出来事、本 や映画の中の一文などによって、心の奥底に灯る思いが揺らぎ再び前に進もうとする勇 気へと変わって行けるというテーマで制作しました。 作品を子供の姿で表現したのは、幼いころから勇気を出すことが苦手だった自身の経験 を反映しています。 (黒兎「ラ・ヴィ」との対話) 赤い瞳の黒兎「ラ・ヴィ」は、弱気な私の手を取って、優しく語りかけてくれます。 •一歩一歩でいいじゃない •下を向いて立ち止まっているのはつまらないじゃない •顔を上げて、光についていったらきっと楽しいよ ラ・ヴィの温もりと語りかけで迷いや弱さで曇った心に光がさしてきます。少しだけ 「前に進みたい」という勇気が輝きだします。 (黒兎について) 名はラ・ヴィ。赤い瞳を持つ。、その名はフランス語で「生命」や「人生」を意味しま す。豊んな人生や、明日への活力を象徴し、そっと寄り添い励ましてくれる存在です。
人形w18 D12 H31 敷き台w22.3 D12 H2
石塑粘土 木粉 アルミワイヤー 人毛 着物古布 アクリル綿
No.8 古城真理 こじょうまり
『心のきらきら』

住んでいるマンションの前にある小さな電気屋の裏に、電気製品の梱包に使ってあった発泡スチロールがゴミとして、バキバキと折られて大きなビニール袋に入れられていたのを発見し、快くもらい受けた。これを素材にして何か人形的なものを作ろうと思ったのだ。妻に聞くと、『うさぎさんが良い』と言うのでうさぎを作ることにした。 強く人形と意識して制作したのは、数年前に正統派の球体関節の人形制作を習いながら一度作っただけで、今回が2度目となる。 まずは捨てやすいようにと折られたスチロールをある程度大きな塊にすべく、切り口の形状などを見ながらジグソーパズルのように合体させ、またそれらをさらに合体させ作りやすい大きさのスチロールの塊を生み出す。 発泡スチロールは加工するに少々扱いにくく、軽いのは良いが、切りにくく、切りクズが静電気を帯びて、吸着する。細かな細工は無理なので、スチロール専用カッターとか熱線カッター、静電気解除スプレーなどで制作。 捨てられるために折られた形状を、できる限り、自然体として尊重し、また、コンクリートむき出し的に、発泡スチロールの素材感を全面に出すものとした。 単に妻のうさぎ好きで作られたものだが、夢想的に考えれば、うさぎは地球の衛星である月に住む、では、地球以外の惑星の衛星にも住んでいるかも、と考えると、土星の衛星、エンケラドゥスが浮上する。 全面的に純粋な氷で覆われ、地下には液体の水があるとも言われ、ひび割れから、時折、水蒸気と塵を噴出する(塵は土星のE環の材料となる)、南極辺りは温度も高い。 生物が住んでいる可能性が言われる衛星、エンケラドゥス。そう仮定しよう。 このうさぎは土星の衛星エンケラドゥスに住むうさぎ、とする。
23x36x45
発泡スチロール、ビニール・テープ、紙粘土
No.9 森本孝 もりもとたかし
『エンケラドゥスのうさぎ』

私が高齢者になった時、果たして私を介護してくてる人はいるのだろうか?もしかしたらロボット技術が発達して、介護ロボット、介護アンドロイドがお世話をしてくれるのかもしれない。 人間ではなく、生命を持たないロボットにお世話をされることに拒否感を抱く人もいるかもしれませんが、私は案外、物言わぬ人形やぬいぐるみを愛でるような気持ちで介護ロボットと付き合っていくことができるのではないかと期待を膨らませています。 いつも微笑み、ずっとそばに寄り添っていてくれる、そんなロボットと終わらないワルツを踊るような日々を夢見て。
幅20.2・奥行き20.2・高さ43.5cm
石粉粘土、アクリルガッシュ
No.10 有田依句子 ありたいくこ
『Endless Waltz』

『白露』 コンセプト 秋が深まり、夜露が降る季節 朝日に照らされ風に揺られながら白く光る草原 素材 布・木毛・苧麻・麻・ビーズ 普段は固定ポーズ人形を制作していますが 今回初めて球体関節に挑戦しました
27・13・63
シーチング 木毛
No.11 人形横町 にんぎょうよこちょう
『白露(はくろ)』

幅20cm・奥行き14.3cm・高さ58cm(別台込みで59.2cm)
別台直径21.5cm 厚み1.2cm
石塑粘土 アルミパイプ アルミ線 銅液 銅腐食液 着物地 紐 他
人はいつも心の中で、何かに向かって祈っているのではないでしょうか。人間の不確かさと、無力さを思うと祈らずにはいられません。
No.12 上野 延子 うえの のぶこ
『いのり』

不動明王がモデルの作品です。 不動明王は、仏教、特に密教において非常に重要な存在で、日本では「お不動さん」として広く親しまれている仏様です。 恐ろしい姿をしていますが、深い慈悲と強い決意を持った、人々を救うための仏様です。**忿怒相(ふんぬそう)**と呼ばれる、怒りや恐れを表現する表情と姿をしていますが、これは人々を威嚇するためではなく、煩悩にまみれた人々を厳しく叱り、正しい道へと導こうとする強い決意を表した慈悲の表現なのです。 背中に背負う炎は、人々のあらゆる煩悩や困難を焼き尽くし、清める役割を象徴しています。右手の剣(倶利伽羅剣)は智慧の剣と呼ばれ、人々を苦しめる煩悩や迷いを断ち切る力を示しています。左手の縄(羂索)は、悪や煩悩を縛り上げると同時に、道を誤った人々を正しい道へと導くための慈悲の象徴です。 不動明王の主な役割とご利益は次の通りです。 • 厄除け・災難除去:悪魔や災いを打ち払い、人々を守ります。 • 煩悩退散:心の迷いを断ち切り、不動の心(揺るぎない心)を授けます。 • 修行者守護:修行に励む人々を守り、悟りへの道を助けます。 不動明王の恐ろしい外見は、「動かざる智慧」と「揺るぎない慈悲」の裏返しであり、人々を救うために強い決意を持って立ち向かう存在なのです。 この作品は、不動明王の中でも、鎌倉時代の荒々しくも若々しく、たくましい、特に運慶や快慶によるものに興味を持ち、影響を受けて制作されました。より躍動的なものになるように作られています。 制作方法は次の通りです。 油粘土で人形の顔の原型を作ります。今回は初代若乃花をモデルにしました。原型から石膏で型を取り、この石膏型に張子紙を何層にも重ねて貼り付けて、顔を作ります。 袋状にした木綿に木毛を詰めて胴体と四肢の芯を作ります。アルミ線を芯材にして、全体を作り上げ、樹脂粘土で細部を造形し、最後に染色した木綿を貼り付けます。髪の毛は、麻糸を染色して頭部に貼り付けます。台座は発泡スチロールで形作ります。炎はアルミ線を芯にして、紙や和紙で仕上げています。
幅80cm 奥行き50cm 高さ90cm
木毛、綿布、アルミ線、和紙、
スタイロフォーム、麻糸、樹脂粘土
No.13 佐々木英俊 ささき ひでとし
『大明王 -慈悲にあふれた、如来の怒れる化身-』

ラド―ルで球体関節人形を作成のうえ和紙の重ね貼り+吸水防止剤+色付け+和紙の重ね貼りをしました。 ちょうど満月(ハーベストムーン)の皆既月食の時期でした。赤いボデイの色付けはそんな色合い(茜色)にしました。和紙貼りによりザラッとした肌感が表現できたかと思います。背景には繭を想定し、いろんな素材を組み合わせ繭らしきものを作りました。孵化する、生まれたという感じを表現しました。また、髪の毛は繭糸のようなものをさがしていたら、ナイロンの縫い糸に偶然出会いました。縮み具合が面白く。このままでいろんな動きや長さが調整できます。
60・60・45
ラド―ル・和紙・グラスアイ・ナイロン糸・麻
No.14 吉村京子 よしむらきょうこ
『満月の夜に生まれる』

私は昔から古布が大好きで藍染やチリメンの布を集めて来ました。 収集癖が有り布が好き過ぎる私は、今度こそは使おうと布を取り出し眺めては結局箪笥に戻す日々を繰り返していました。 でも最近いい加減に布達を形にしなければと思っていた矢先、この公募展を知り即参加を決めました。 最初に違う雰囲気の藍染の布を数点用意して落ち着いた重みの有る半纏を作る表布とし、裏布は古い端午の節句用の幟旗を使う事に決めました。 次に長い年月を生きてきた布達に負けないエネルギーを持った人形をと50代位の経験豊かな人物をイメージして制作に入りました。 そして形に成った人形に仮縫いの半纏を着せて見ると、ピッタリと合い過ぎて逆にお互いのエネルギーを消し合っている様なつまらなさ。 顔はどんどん削られてシャープになり、ボディには沢山の筋肉がついて力強く逞しい青年が出来上がりました。 布の重みの有ると存在感と此れからの可能性を秘めた青年の力強さのぶつかり合いを楽しいと思い、作品を完成させました。
24・20・48cm
木粘土・絹糸・布・ワイヤー
No.15 青木晶子 あおきしょうこ
『纏う』

家の近くの公園には、春になると見事な花を咲かせる枝垂れ桜があります。その姿にはただの自然の美しさを超えた、霊気のような気配があり、美と同時に命をも吸い取るような恐ろしささえ感じさせます。 その印象を作品にしたいと思いました。幹は刺し子で古木のうねりと迫力を表し、着物には桜の花びらを縫い付けます。すべて白を基調としながらも、異なる質感の白で表現したいのです。 春の夜、満開の古木の前で舞う桜の精。その姿に、かねてより挑戦したかった文楽人形の手の表現を取り入れ、妖しさと色気をにじませたいと思いました。
25・25・85㎝
石塑粘土 油彩 グラスアイ 絹糸
No.16 尾花 智子 おばな ともこ
『桜の精』

以前、暴力的にデフォルメしたダビデ像を制作した際に、敗者の象徴として制作したゴリアテの生首の台座として巨人の胴体を制作した。神に選ばれたものとして侵略する者を倒したダビデは王となりイスラエルを統治する。あくまで神話に近い物語の登場人物として二者の生と死を題材とした。 素材は保温や緩衝材として利用される工業製品を使用している。筒状のものを縦にスライスして陶芸の紐造りのようにグルーで張り合わせて造形しており仕上げの表面加工や着色はしていない。形状維持のために芯材として木材やエンビパイプなどは使用しているが、基本的に緩衝材を貼り合わせた際の張りで表面の形状を維持している。 素材の性質上繊細な造作は難しいので大胆さだけの表現になるが、その特性を生かす作品作りを目指している。 「常に何かをやらかすこと」これが僕の制作信条です。
幅 90 奥行き 120 高さ 160
発泡ポリエチレン
No.17 やちぐちひろゆき
『ゴリアテの首台』

人形というものに対し、ひとを写すものということに対し、絵画にしろ写真にしろ、自分の中では、自分を写すもの、投影するもの、表現するものとして、在るのが、現在地です。自分にとってひとを写すものはともに遊ぶ友だちではなく、対相手ではなく、自分から生みだされる分身であること、文学、絵画、宗教、あらゆる興味が自分を通して消化され、昇華され、指先からでてくる感覚に沿っておもむくままに創られていく、イメージはあるようでなく、ないようで在り、何度も何度も削り、重ね、近づけました。作品タイトルはサローリアです。サロメとオフィーリアの造語です。このふたりの処女性、無垢性、透明性を軸に、彼女たちの虚無感の一瞬を切り取りました。その一瞬は自分にしか出せない、少女と女性の中間の時間、身体性、心情なのではないかと思います。髪とドレスは長いので女性に近いとは思いますが、全部取りますと少年の肢体に近いと思います。男性性、女性性に囚われることのない、中性であること、性の前に人間であることを潜在意識に込めました。十代で澁澤龍彦氏の著作に出会い、天野可淡氏の人形と出会いました。宗教画、演劇、映画、歴史あらゆる人間模様や美などから自分の中の何かを消化、あるいは昇華されることを探していました。二十代で四谷シモン先生のお教室通い、基礎の四体を制作させていただきました。その後四十代で能面制作の中村光江先生のお教室で、一面だけ制作させていただきました。また人形制作をと思ったときにコロナ禍になり、プッペクルーボ P-5を土台に粘土を重ね、塗りには胡粉を使用しました。シモン先生の洋風で知的な創作感、光江先生の能面の表情の創り方はサローリアの魂のひとつとなっています。自身の人形はクールな人形ではありません。自分のなかにあるあらゆる感情、経験を含めた自分自身であり、そこにサロメとオフィーリアにも協力してもらい、理想の寓話の主人公に投影することができました。サローリアは角度によって怒りを秘めたり心細くなったり、力強く決意したり、なにもかもから浮遊したりする表情を込めました。ぜひ、いろんな角度から見て表情を愉しんでいただけたらと思います。
15㎝・10㎝・45㎝
プッぺクルーボ
No.18 絢紫 あやむ
『サローリア』

◆作品に関する説明 この作品は、私の一か月間の入院の記憶から出来ています。コロナ禍の入院生活体験は、人生のうちで苦い思い出として強く残っています。 極度の閉塞感とぴりびりする緊張感。そして機械的に提供される食事。まるで機械に育てられている幼い赤ちゃんのような感覚に陥り、仕切られた白いカーテンが檻のように感じられ、私は囚人になったような錯覚に陥りました。 その時「私は以前から社会という枠の檻の中に入っているのだ」と気づき、この作品〜赤ちゃん囚人〜が私の心の中に生まれたのです。当初は無気力で怠惰な表情の作品でしたが、製作に打ち込むうちにその感覚が昇華し、ひとすじの希望を感じ始めて『今を生きる子』が作品として生まれました。
◆技法・素材及び影響を受けたもの 技法は球体関節で、索材は石塑粘土で出来ています。粘上を日々少しずつ盛って乾燥させて形にします。 私が球体関節人形に出会ったのは10代の頃でした。初めて観た時に、これは人の手で作れるのだろうか。私でも作ることが出来るのだろうかと日々、悶々としていたのを覚えています。私の人形の師、山吉由利子先生に師事したのは20歳の時でした。先生の元で教わりながら毎月教室に通って、試行錯誤しながら形にしています。画学生だった頃から、人体デフォルメが好きで、気づいたら作っていた人形もデフォルメされ、今の形になりました。 何年も作っていく中で自分自身の内面が作品に出てきたように思います。
◆工夫した箇所 入院生活で身動きが取れない不自由さを表す為、手足をミトン・靴下にベルトで押さえ表現しました、又、自分を信じるお守りに鍵を首から下げています。 顔についてですが、誰でもなく、実際の自分の顔をデフォルメしている訳でもなく、自分の心の顔を作り上げていると思います。 この顔の人形を作る様になったきっかけは今まで生きてきて体験した出来事から、女性の強さや可愛いものが一生好きという所、それらを凝縮して形にしたいという思いが湧き、作り続けてこの顔に辿り着きました。
◆メッセージ これからも人形が作れる限り作り続けて行きたいです。 負の感俯も作品製作の過程でプラスに変えて行けるという創作活動に身を置ける幸せを感じつつ、見てくださる方々に楽しんで頂ける作品を作り続けて行きたいと思っています。
幅2 1 cm 奥行1 9 cm 高さ2 9 cm (座った状態の高さ)石塑粘土 既製品使用:アンティークキー、
人形用バックル 衣装共同制作者:miporin
No.19 さとう たまちよ
『今を生きる子』

惚れ薬を持って得意そうな森の妖精パック。恋模様を解決するはずが、恋は更にこんがらがってしまいます。てんやわんやの夏の森の一夜をどうぞお楽しみあれ。楽しい想像をふくらませるような人形を作りたいと思い、制作しました。 素材は布、綿、ワ イヤー、ビーズ、ガラス、毛糸です。四肢と頭にワイヤーが入っていますので、ポーズを変えて楽しめます。
人形/幅24cm、奥行き16cm、高さ40cm 台/直径38cm、高さ3cm布、綿、ワイヤー、ビーズ、ガラス、毛糸
No.20 アトリエ・シュガール
『妖精パックー真夏の夜の夢』

技法 原型の造形から完成までに約二年を要しました。石膏型を経て四分の一スケールの陶製人形として焼成し、最大の特徴として膝と肘に二重関節構造を導入しました。これにより正座など自然なポージングを実現。強度と美観を両立させるために試作と調整を繰り返し、複雑な焼成過程も克服しました。 素材 主な素材は磁土を高温焼成し、陶器特有の硬質感と上品な光沢を生み出しています。衣装には透け感と軽やかな揺らぎを持たせ、飄帯には光を受けて陰影が映える布を選び、立体感を際立たせました。 制作のきっかけ 当初は「藤の花の妖精」をテーマに構想しましたが、羽生結弦選手が出演するCMの衣装に強く惹かれ、唐代・漢代と奈良時代の要素を織り交ぜた独自のデザインへと発展しました。その結果、和漢の枠を超えた新しい衣装美を表現しています。 影響と工夫 唐代の華麗な衣装、日本奈良時代の格式ある美意識、そして舞台芸術やフィギュアスケートの流麗な動きからも着想を得ました。関節設計では自然な動きと美しいシルエットの両立を追求し、衣装は「融合」ではなく「調和」を重視しました。飄帯は装飾にとどまらず、動作に伴って空気を孕み、一瞬の非現実を生み出します。 メッセージ 「薫」がもたらす余韻のように、日常を離れた静かな安らぎと幻想のひとときを感じていただければ幸いです。
404050
磁器
No.21 Soul Factory ソウルファクトリー
『薫』

【コンセプトと制作動機】 秋の夕暮れ時に、巡る季節への畏敬をこめた祈りの唄を、天に届ける女性の姿を表現した人形です。霊的世界と人々をつなぐ、シャーマンにみたてています。 夏の陽射しがやわらぎ、よりトーンの落ちついた茜色の陽光に染まる秋の季節が到来すると、生き物に余裕が生まれ、生命活動も高まって来ます。冬に向けて食物をたくわえ、子孫を残す準備を始める季節でもあり、秋の生き物らの生への歓喜の中には遊びの様相まで表われます。そして、秋の恵みを堪能した後におとづれる祈りの厳かさ。私自身が毎年繰り返して体験して来た一連のいとなみの中の、秋のこのひとときの美しさを、どうにかしてお人形の姿をかりてあらわにしてみたいと思い手がけた作品です。 【素材と技法】 本体は石塑粘土製、胡粉吹きつけ仕上げの球体関節人形(全身14関節)です。髪は細目の絹スガ糸を、染料で手染めしました。衣装は養蚕に欠かせない蚕をイメージして制作しました。
本体:W40 D30 H70 専用什器:W30 D30 H30石塑粘土 胡粉 グラスアイ 絹スガ糸 布 絵具
No.22 あきこの柳行李 あきこのやなぎごうり
『あかねさす』

かつて生物は天才科学者たちにより好き放題デザインされ、試験管の中で生み出されていた。 神の権利を巡って科学者たちの間に争いが勃発し、人類が滅亡した後も生き残っていたカラフルでヘンテコでかわいいいきものたち。 二足歩行に進化した昆虫はご機嫌に走り回り、図鑑の羽を持つ蝶はペラペラとページをめくりながら飛び、4本の足を持つ「ナニカノメ」は虹色の雨を待つ。 彼らは木々に飲み込まれた人類の残した遺跡の森で、宝探しをしながらひっそりと平和に暮らしている。 今回出品した「ナニカノメ」は、私の頭の中にある世界「トゥリホパンワールド」のキャラクターの中の、脇役の1匹です。
幅17 cm 奥行き15 cm 高さ24cm
石塑粘土 アクリル絵の具
No.23 Hanamusic ハナムシック
『ナニカノメ』

人は必ず老い、独りになっていきます。その日々をどのように過ごしますか。 肉体は老い、やつれていきます。髪が抜け、しわができる。シミが増え、皮膚はたるむ。しかし、精神が自由になれば表れてくる輝きがあります。若さだけが美しいのではありません。 過去を想い出しつつ 日々に追われていても、今を感じとる心があるはずです。 土手を歩く、空を眺める、アイスを食べる、暖かいお茶、風のにおい、草のかおり、散歩を喜ぶ犬、家の灯り。 生きるという暖かい想いが浮かびますか。 人に縛られる必要はありません。お洒落をしましょう。ポケットにお気に入りを潜ませ、素敵なパラソルと飴玉を持ってお出かけすれば、楽しいものが見つかるかもしれません。 飾って眺めて愛でる可愛い人形ではなく、見る人が何かを感じることができる人形を作り出すことを目指しています。
25cm・15cm・53cm
石塑粘土/胡粉/油彩/すが糸/グラスアイ
No.24 戯夢理 ぎむり
『飴玉もって』

この作品は《現代人形 contemporary doll『浄土への臨終』》という題名で取り組みました。作品の副題である『浄土への臨終』とは人形の身体の黒や赤、黄色の汚れやキラキラなどは人間の汚い汚い煩悩です。欲まみれの汚い現代の女が清い浄土へ導かれる様を表現しました。今からこの女の前には阿弥陀仏が現れ浄土へ向かいます。そんな安らぎへの歩みを表現しました。私は思春期から生きることに悩みが尽きず27歳の時に得度し僧侶になりました。念仏申す中で新しい気づきに沢山出会えました。黒い衣は私が僧侶の修行時代に身につけていたもの、念珠は念仏者の祖父や亡くなられた先生や母や私のものです。制作のきっかけは中村正義さんの展覧会です。京人形作家の面屋庄甫先生より勧められ伺いました。
面屋先生より、先日私の作品を見ていただき………人形は自分の内に込めた深い思い、自分の潜在意識の中にあるものを湧き出して制作しなくてはならないと伝えていただきました。
私は勉強中です。
先生がおっしゃた潜在意識の作品がまだ難しく、自分の内面の問題を作品に現すことには難航極まりなく、ずっとそのことを考える毎日でした。今回の私の作品は、中村正義先生展覧会で感動した作品(『女』昭和32年)を見て『現代人形』にし作品にしたものです。面屋先生は《若い頃は色々な作家の影響を受けて作品の形も変化して行って良いと思います。その後、自分の作風が出来ていくのが良いですね。》と伝えてくださいました。面屋先生のおっしゃる潜在意識の自分を作品にすることは私にはまだ出来ません。でも、今回、今私ができる力で思い切って『現代人形』を制作しました。人形にできる新しいアートという部分でもこの作品は取り組みました。かわいいだけの人形ではなくアートとしての人形。新しくアートの人形の分野も私は切り開いて行きたいです。工夫したことは、人形は手は下ろして立っているしかできませんが手のポーズを取りました。後安定して立っていることも苦労しました。素材は石塑粘土、アクリルガッシュ、ボディは綿で木の芯が入っており、目は自作で樹脂でつくりました。
メッセージ
今回のコンクールで沢山の方々に自身の作品をご覧いただき認知していただけたら幸いです。人形をはじめて20年以上経ちますが私はまだ無名で今一度初心に帰る気持ちで改めて人形で食っていきたいという気持ちでこのコンクールに臨みました。現代人形研展が今後の私にとってプラスに作用するように望みます。
高さ130cm 幅43cm 奥行き42cm
石塑粘土・アクリルガッシュ・胡粉
No.25 窪田藍 くぼたあい
『現代人形contemporary doll 『浄土への臨終』』

名前の由来はラテン語で子供たち、自由な人々を意味します。Liberi(リーベリー)は私自身を小さく人形のかたちをもって表現した球体関節人形です。物心ついたときからずっと変わらない自分の核の一つが人形愛でした。リカちゃんから始まり、バービー、ブライス、ビスクドールとあらゆる人形を手の届く範囲で集め愛でる事が大好きでした。球体関節人形(創作人形)との出会いは、ドール専門誌(Dolly*Dolly)。そこでは恋月姫さんや四谷シモンさんのドールが紹介されていました。いつも目にする人形とは違う、独特の雰囲気がありインパクトがありました。「人形って作るものなんだ」とその時知り、漠然と将来は人形を作る人になりたいと想い親に宣言していたのを今でも覚えています。その時の1人遊びは紙粘土で人形を作り、目にはビーズを入れてみたり、紙に絵を描き、それを立体的に貼り合わせて綿の代わりのティッシュを詰めてマスコットを作ってみたり。手縫いで人形のお洋服を作ってみたり。三人姉妹の真ん中ですが、私一人だけがそのような創作活動をして遊んでいました。現在師事している陽月先生に教えを乞いたい思ったきっかけは小学校低学年のころに観た映画『エコール』の宣伝の為に作成されたドール達。こんなに儚げで美しく、幻のような人形が存在するんだと衝撃を受け、それからずっと陽月先生の手がける人形のファンです。 そんな幼少期から時が経ち……私は人形作家とは全く違う道に進み、単調な毎日を過ごしていました。父の死、コロナ禍をきっかけに、やりたい事はやれる時にやらなければ! という気持ちで上京。働きつつも創作活動がしたいと考え、上京後約2年間は服のデザインやパターン、縫製を学びました。しかし、転職には繋がらず、ものづくりを仕事にしたいという気持ちもずっと消えずもんもんとした日々の中、改めて自分は何が好きか? どんな大人に憧れていた? と振り返った時、人形を作りたかったんだ! と思い出しました。 そこから陽月先生が講師を務めるピグマリオン人形教室に通い始めました。 今まで、本当にやりたい事に向き合わず、ぱっとしない人生を生きてきました。ですが、ありのままの自分・コンプレックスも含め全部を受け入れ愛していけるように、小さな人形に自分を落とし込む事をきっかけに自分を見つめ直そう、大切にしてみようと思いました。このような想いからリーベリーが誕生しました。
高さ約50cm
粘土(ラドール)
No.26 zion しおん
『Liberi』

コンセプト
【技法】 木彫りの球体間接人形
【素材】 木材(楠) 絹糸(髪・まつ毛) レジン(眼) 布(洋服)
【制作のきっかけ】 木彫りを始めた頃、近所の方から友永詔三さん著書『動く木彫人形』をいただいたことをきっかけに人形を作るようになりました。動くことについてもう少し学びたくなり2018年にプラハのPUPPET IN PURAGUEのMirek Trejtnar氏によるワークショップに参加したのをきっかけに、マリオネット、ストップモーションアニメーション、球体間接人形など動く人形について探求するようになりました。
今回のLinaは審査委員長の四谷シモンさんの人形が大好きで自分の中にそのエッセンスを取り入れたく制作しました。完成してみると和風の顔になってしまったので彫り直すか躊躇っていたときに木彫りを習いにきていた優子さんという少女のような女性と3日間一緒に過ごしました。いろんな話をして彼女が帰ったあと顔を彫りなおしてみると優子さんの顔がでてきました。名前のLinaはフランス語で優しいという意味からつけました。
【影響をうけたもの】 小さいころからNHKの人形が出てくる番組やアニメ、ハウス名作劇場、人形絵本が大好きでした。今、思い返してみるとそれらの人形やアニメは東欧からも影響を受けていたのではないでしょうか。たまたま私の作品を見た友達が東欧っぽいよねと感想をくれて、チェコのストップモーションアニメーションなどを見るようになりました。ヘルミーナ・ティールロヴァー、イジー・トルンカ、イジー・バルタ、シュバンクマイエル、日本では四谷シモン、金子国義、川本喜八郎、与勇輝など美術的にも美しく可愛いだけではない少し怖いような影を併せもつ作品に惹かれます。
【工夫した箇所】
今回はまつ毛も髪と同じ絹糸を貼って質感を合わせました。ボンドで仮止めして目のレジンで固めています。
9・4・21
木材(楠)・布
No.27 牛平安代 うしひらやすよ
『Lina』






